仮想通貨「イーサリアム(ETH)」と「スマートコントラクト」がもたらす破壊的イノベーション

イーサリアム 各コインの特徴

こんにちは。

今回の記事では、日本一分かりやすく「イーサリアム」と「スマートコントラクト」の仕組みについて説明いたします。

仮想通貨に興味を持ったことがある人なら、「イーサリアム」の名前を聞いたことがあるでしょう。

仮想通貨の代名詞にもなっているほどの知名度があるビットコイン(BTC)は、言うまでもなく、仮想通貨界で時価総額がダントツでトップ。

次いで、第2位がイーサリアムです。

最近のビットコインは、価値の保存としての性格を強めており、世界中の投資家が注目し始めてきました。

一方のイーサリアムは、「ワールドコンピューター」としての地位を狙っており、インターネットの次の時代を見据えて作られているものです。

さて、ビットコインとイーサリアムは何が違うのでしょうか。

ビットコインは、送金の機能しかありません。

誰から誰に何時にいくらのビットコインを送金したかというデータしかブロックチェーンに記録できないのです。

しかし、イーサリアムは、「ワールドコンピューター」として、何でもできてしまいます。

その基礎になっている画期的な技術が、「スマートコントラクト」です。

一言で言うと、単なる送金履歴の他に、「金利いくらで貸す」などの、あらゆる「契約情報」や「条件」をブロックチェーン上に記録できます。

このスマートコントラクトの仕組みを使って、イーサリアムベースの新しい仮想通貨を発行することもできます。

この新しい仮想通貨がさらに様々な機能をもって、なんらかのサービスを行うことで、イーサリアムはあらゆるサービスの中枢機能、つまり、「ワールドコンピューター」としての機能を獲得しているのです。

このでは、イーサリアムの激動の歴史と、スマートコントラクトの無限の可能性、さらに分散型アプリの基本について解説します。

そもそも、ビットコインから始まったブロックチェーン自体が画期的な発明なのですが、ブロックチェーンの中にスマートコントラクト機能を組み込もうという発想も、また凄いのです。

ブロックチェーンをさらに「使える技術」にするため、「イーサリアム」を考え出したのが、ロシア系カナダ人のヴィタリック・ブテリン氏です。

このヴィタリックさん、ブロックチェーン上でスマートコントラクトを動かす、イーサリアムのアイデアを思いついて文章にまとめたのが、なんと19歳!

「現代の天才」と呼ぶにふさわしい人物の1人です。

ヴィタリックはビットコインの魅力に取りつかれた一人でした。

幼少期から、数学にすぐれた才能を見せていたヴィタリックは、17歳の頃、コンピュータエンジニアの父親からビットコインの話を聞き、とても興味を持ったそうです。

中学生の頃はオンラインゲームも大好きだったヴィタリックですが、中学生の頃、ゲーム会社の都合で、設定が一方的に書き換えられたことがあったそうです。

そんなヴィタリックにとって、「管理者が誰もいない、誰にもコントロールされていないのに、安全にお金がやりとりされている」というビットコインの世界が、とても魅力的に思えたのでしょう。

2013年、ヴィタリックさんは新型仮想通貨「イーサリアム」のアイデアを発表するホワイトペーパーを、ネット上に公開しました。

そのタイトルは、『次世代型スマートコントラクトと、分散型アプリのプラットフォーム』でした。

タイトルの中に、イーサリアムについての説明が、すでに凝縮されています。

イーサリアムが目指しているのは、まさに、「分散型アプリのプラットフォーム」なのです。

さて、今さらではありますが、皆さんに大切なことを伝え忘れていました。

「イーサリアム」という言葉が意味するのは、正確には仮想通貨のコインの名称ではありません。

「えっ?」と思った方も多いかもしれませんね。

より正確に言えば、ブロックチェーン上でさまざまなスマートコントラクトが動く場、つまりプラットフォーム全般のことを、イーサリアムと言います。

そのイーサリアムのプラットフォーム上で使われる仮想通貨は「イーサ(ETH)」と呼んで、本来は使い分けます。

でも、実際の会話では「イーサリアムを買った」で、きちんと通じますし、取引所にも仮想通貨の銘柄として「イーサリアム(ETH)」と書いてありますから、特に問題があるわけではないです。

ところで、イーサリアムのほかにも「イーサリアムクラシック(ETC)」という仮想通貨があり、「イーサリアム」との違いについて、気になっている人もいるのではないでしょうか。

イーサリアムクラシックは、「The DAOダオ事件」と呼ばれるハッキング事件をきっかけに、イーサリアムが「分裂」したためにできました。

The DAOとは、イーサリアムプラットフォーム上で、分散型の投資ファンドをつくろうとする、DeFiの先駆けのようなプロジェクトです。

“DAO”とは、「分散型自動組織」(Decentralized Autonomous Organization)の略称です。

2016年5月にICOでDAOトークンが発行されました。

The DAOでは、DAO保有者を中心とした投資家たちの話し合いや投票による、つまり、多数決で投資先を決定するという民主的なルールで動かしていくことになっていました。

そして、決定に従いたくない投資家は、The DAOに出資していたトークン(DAO)を引きあげてETHに変換し、The DAOのコミュニティから抜けることもできました。

これを「スプリット機能」といいますが、このように各メンバーの自主性を尊重したルールが設定されていたのです。

しかし、あるハッカーがスプリット機能を悪用した結果、2016年6月17日、日本円で約65億円にも相当するETHが外部へ不正に送金される事件が起きたのです。

このハッキングをきっかけに、The DAOのプロジェクトも事実上消滅しました。

ブロックチェーンに記録された情報は、たとえ管理者であっても改竄することは基本的にはできません。

このため、E T Hのブロックチェーンに記録された不正取引の記録もそのまま残ってしまいます。

しかし、当たり前の話ですが、資産を失った人からすると、「お金を返せ!」という気持ちになりますよね。

ここで重要なのが、ビットコインの理念・思想です。

ビットコインは、「誰にも管理されていないからこそ価値がある」という「非中央集権」的思想が、その根底に流れています。

そのため、当然、不正送金があっても、誰にも管理されていないのだから、その事実を受け入れるしかないということになります。

もし、その不正送金情報を書き換えて、不正送金が無かった状態に戻すことを認めてしまうとすれば、結局のところ誰かに管理されているということだから、ビットコインの理念に反します。

誰かに管理されている、つまり、「法定通貨と同じじゃん!」ということですね。

The DAOの不正送金事件においても同様に、ビットコインの理念に倣い、「イーサリアムの不正送金の情報を無かったことにするのは、ビットコインの思想に反するからダメだ」という考えの人もいれば、「どんな手を使ってもいいから、投資した資金を回収するために不正送金を無かったことにしろ!」という二つの考え方が対立しました。

もし、「不正送金を無かったことにする」のであれば、ブロックチェーンに記録された情報は改竄できませんので、とり得る手段としては、不正送金が記録されたブロックの一つ前のブロックから、チェーンを二つに分岐させる「ハードフォーク」という手法になります。

ハードフォークするということは、不正送金がそのまま記録されたチェーンと、不正送金が記録されないチェーンの2つが誕生するということです。

結果的に、この事件では、ハードフォークすることにより決着し、ビットコインの理念を継承したチェーン、つまり、不正送金がそのまま記録されたチェーンと、投資家の意見を反映して、不正送金が反映されていないチェーンの2つが誕生しました。

前者の不正送金がそのまま記録されたチェーンを「イーサリアムクラシック」、後者の不正送金の記録が反映されていないチェーンを「イーサリアム」と呼ぶことになりました。

なお、ヴィタリック氏をはじめとする開発チームは、イーサリアムクラシックではなく、イーサリアム側をフォローすることとしたため、イーサリアムクラシックは、バージョンアップの開発力やハッキング攻撃に比較的弱いと指摘されています。

また、イーサリアムについては、不正送金を受け入れないという方法を強引に推し進めたことで、「非中央集権の考えに反したことを行なった!」と今でも指摘されることはあります。

それでは、ここからは、イーサリアムのバージョンアップについて、説明していきたいと思います。

イーサリアムは、最初から3段階のバージョンアップが予定された上で立ち上げられました。

あくまでも、将来の可能性に含みを持たせた上で、とりあえずリリースされた開発途中のベータ版なのです。

実際のインターネット環境で技術的に対応できるかどうか、世間での需要はどうか、現実を直視して確かめながら徐々に進化させていく、という戦略を採っているのです。

それでは具体的に、それぞれのバージョンアップについて見ていきましょう。

まず、第1段階です。

これは、フロンティア(Frontier)と呼ばれ、2015年に実施されました。

世界で初めてスマートコントラクトをブロックチェーン上に組み込んだプラットフォームとして、イーサリアムのバージョン1.0がリリースされました。

次に、第2段階。

これは、ホームステッド(Homestead)と呼ばれ2016年に実施されました。

マイニングの採掘難易度が改正されたり、ETH送金手数料(ガス代)が値上げされたりと、重要な変更がありました。

また、新たな命令コードが追加され、より多くの技術者にとって使いやすくなりました。

ちなみに、この直後にThe DAO事件が発生しました。

次に、第3段階です。

これは、メトロポリス(Metropolis)と呼ばれ、2017年に実施されました。

スマートコントラクトがより使いやすくなったり、セキュリティが強化されて、ハッキングにも強くなりました。

将来、超高速処理の量子コンピュータが、イーサリアムブロックチェーンの暗号を破ろうとしても破れないほどの安全性を確保したと言われています。

次に第4段階です。

これは、セレニティ(Serenity)と呼ばれています。

「イーサリアム2.0」と呼ばれるほどの重大な最終バージョンアップで、セレニティは当初、2018年に予定されていました。

しかし、開発が難航し、延期に延期を重ねていました。

では具体的に何が変わるのかと言うと、まず、今までビットコインと同じだったマイニングのルール(PoW)が変更されます。

PoWについては、ビットコインの記事もご覧ください。

ちなみに、PoWを一言で言うと、新たなブロックを承認するごとに解かなければならない計算問題があり、その問題を最も早く解くことができたマイナーが、報酬としてビットコインを得ることができる仕組みです。

10年ほど前、ビットコインが始まったばかりの時代なら、それでもよかったのですが、BTCの価格が上昇し、マイニングの競争が激化している現在では、ブロックチェーンを維持するために、マイナーにとって、膨大な消費電力と一定以上の処理時間が必要となっています。

これでは送金手数料が高騰するだけでなく、地球環境にもよくありません。

また、豊富な資金力を持つマイナーばかりに報酬が集中しがちであるため、非中央集権・分散型のITシステム構築を目指すブロックチェーンの理念とも相性がよくないと指摘されることもあります。

そこで、セレニティ版のイーサリアムでは、プルーフオブステーク(PoS)を採用します。

これは、一言でいうと、株式を多く持っている人が会社の経営権に口出しできる構造と似ています。

つまり、ETHの保有量が多いほど、保有期間が長いほど、新たなブロックの承認権が多く割り当てられ、報酬としてE T Hを手に入れることができるというものです。

承認権は1人のマイナーが独占せず、保有量や保有期間に応じて分配されます。

これによって、PoWでの問題点は解消されるといわれています。

ただし、PoSにも欠点があります。

ETHをなるべく多く、なるべく長く持っているほど有利なのですから、マイナーによるETHの流動性が下がりやすくなるからです。

仮想通貨の流動性が下がると、チャート価格の値が飛びやすくなり、価格の上下が激しくなって扱いにくくなる恐れがあります。

しかし、E T Hの場合においては、はるかに多い人数の投資家が、世界中でETHを売りたがり、買いたがっていますから、心配は要らないということかと思います。

PoSのほかにも、セレニティではさまざまな革新的な技術が盛り込まれることで、ブロックチェーン上にスマートコントラクトなどの記録が書き込まれたり、処理が実行されたりする速度が1000倍以上になると期待されています。

送金の遅れや手数料の高騰などの問題も解消していくはずです。

次にスマートコントラクトの概要について説明します。

スマートコントラクト自体は、ヴィタリックさんの発案ではありません。

1994年に、コンピュータ工学者のニック・サボという人が、初めて仮説として提唱しました。

彼は考えました。

「契約書は、ただの紙切れである。

もし、世の中にある契約書を、すべてプログラムに書き換えることができれば、人の手が入らなくても、契約の内容を自動的に執行する世界が実現するのではないか」と……。

契約には、その中に関わる当事者がいます。

自動化はコンピュータが行うのですが、その自動化の手続きに複雑な計算を行う、あるいはその手続きを隠してブラックボックスにすることで、人間が契約の内容を勝手にいじったり、言い逃れをしたりできない、公正な社会が実現すると、ニック・サボ氏は考えました。

「複雑な計算」「人間が関与できないブラックボックス」という時点で、ブロックチェーンの発想にかなり近いですね。

このサボ氏は、1998年に「ビットゴールド」という、中央でコントロールする人間がいない分散管理による新型通貨のアイデアも示していました。

これが、ビットコインやブロックチェーンのアイデアの基礎になったという説が有力です。

そして、分散管理通貨のアイデアと、スマートコントラクトを組み合わせて、ヴィタリックさんは、勝手に契約を書き換えてズルいことができない、高い信頼性があるスマートコントラクトのプラットフォーム、イーサリアムを開発したわけです。

つまり、ニック・サボは現代の仮想通貨の世界を、陰で支えた功労者といえます。

スマートコントラクトの基本は、契約の自動的な執行です。

たとえば、仮想通貨で借金をしたとき「2021年4月から2021年3月まで、月々定額、12回払いで返済」とブロックチェーンに書き込めば、そのとおりに仮想通貨が自動的に、借主の口座から貸主の口座に移転するようになります。

これだけだと「ただの引き落としじゃないか」と思う人もいるでしょうね。

そのとおり、これだけなら、単なる口座引き落としと同じです。

イーサリアムにとって、これぐらいのことは朝飯前です。

スマートコントラクトに秘められた可能性は、こんなものではありません。

それでは、スマートコントラクトが実社会で応用できると考えられる例をいくつかご紹介します。

まず、交換契約について。

たとえば、「Aさんが持っている1BTCと、Bさんが持っている30ETHを交換する」という約束をした場合、オンラインでのやりとりでは、ちょっと不安にならないでしょうか。

どちらかが先に振り込んでも、相手が振り込んでくれないリスクがあるからです。

自分の 30 ETHと A さんの 1 BTC を交換したい場合、先に送金した方は相手方から送金されないという裏切られるリスクがあります。

なので「おまえが先に払え」「いや、きみが先だ」という、不毛なにらみ合いが続いてしまうかもしれません。

そこで、「 A さんが 1 BTC を送金すること」と「自分が 30 ETHを送金すること」を取引の成立条件としてスマートコントラクトに書き込みます。

すると、ふたつの条件が満たされた場合のみ取引が成立するため、第三者なしで効率的な取引を行うことができます。

次に、エスクロー取引について。

交換契約に少し似ていますが、何かと何かをオンライン上で交換するときに、時間差が生じることがあります。

たとえば、「メルカリ」のようなフリマサイトで、商品の売り手は「代金が支払われるまで発送したくない」と思っていますし、買い手は「商品を受け取るまで、代金は渡したくない」と思っているとします。

この場合、商品が発送されて、買い手に届くまでの間、代金を「メルカリ」が預かっています。

このように、信頼できる第三者を取引の間に仲介させることを、エスクロー取引といいます。

「メルカリ」は信頼できる業者だとして、もし信頼できる第三者がいないときには、代金をいったんブロックチェーンに預かってもらえばいいのです。

スマートコントラクトを使えば、仲介者がいなくてもエスクロー取引が可能になります。

スマートコントラクトを使えば、こういった仲介業者も不要になります。

世の中から仕事を無くすのは、何もA Iやロボットだけではありません。

次に、分散型金融です。

スマートコントラクトは、金融の分野で金融機関を不要にして、手数料や人手、不正の可能性を減らしていくことを目指す、DeFi(分散型金融)で、これから積極的に使われていくでしょう。

仮想通貨の取引で、スマートコントラクトにより、無人の仮想通貨取引所をつくる取り組みを、DEX(Decentralized Exchange:分散型取引所)といいます。

また、運営状況がすべての参加者に明かされていて、透明化されているのも大きな特徴です。

その上、ブロックチェーンの力によって、外部からのハッキング攻撃にも非常に強いです。

DEXはインターネット空間にのみ存在する仮想通貨取引の場であり、管理する企業は存在しません。

仮想通貨を取引したい人だけが集まり、取引所が介入しないので、管理者の都合で一方的な仕様変更が行われず、その点では安心できます。

しかし、あらゆるトラブルはすべて自己責任で解決しなければなりませんので、仮想通貨・トークンの入出金などの手続きでは、特に注意を払う必要があります。

また、銀行の融資審査がおりないベンチャー企業や個人でも、仮想通貨で資金調達することは十分に可能です。

DeFiの一つの形態である「レンディングプラットフォーム」では、仮想通貨を余分に持っている人が、貸し出し用に仮想通貨を預けています。

これを「イールド・ファーミング」といいます。

直訳すると「利息農業」という意味になります。

イールドファーミングされている仮想通貨は、借りたい人がいつでも借りることができます。

その場合、ブロックチェーン上に融資額や月々の返済額、返済期限などが書き込まれ、スマートコントラクトで契約が自動執行されるのです。

そして、返済期限が来れば、元本と利息がスマートコントラクトによって自動的に貸主に支払われます。

この仕組みを使えば、銀行はいらなくなります。

次に不動産の話を見てみましょう。

所有権などを主張するために、手に持てる物であれば、名前を書いたり所持したりして権利を主張できます。

しかし、土地や建物では難しいので、たとえば日本では法務局で不動産の「登記」を行い、社会全体に自分が所有者であることを公示する手続きをします。

ただ、世界には不動産登記の制度が、まだ整備されていない国もあります。

スマートコントラクトを使えば、不動産の取引契約が自動化されるだけでなく、その契約内容がブロックチェーン上に書き込まれるため、権利を公示する役割を「無人で」果たします。

特にロシア近隣の国家では、歴史的にロシアに攻め込まれてきたので、今でもロシアに攻め込まれるではないかと警戒していると言われています。

例えば、ロシアに攻められ土地を奪われてしまったら、自分の土地の所有権を主張することはできません。

しかし、ブロックチェーン上に土地の所有権を記録しておけば、仮にロシアに土地を支配されたとしても、自分の所有権は主張できます。

戦争に負けたら、「ロシア人」になってしまいますが、ブロックチェーン上に、例えば「エストニア人である」と記録されていれば、永遠にエストニア人であることは誰にも改竄されない形で証明できます。

この仕組みを使えば、究極的には、不動産会社も法務局も戸籍法も不要ということになります。

ちなみに、ロシアを悪者のように言ってしまいましたが、そういう意図はないので、ご留意願います。

次に資金調達の話についてみてみましょう。

将来有望で、成長著しい企業にとって、自社の株式を上場させることは、さらに収益を上げるだけでなく、社会的な信頼を得るチャンスとしても重要です。

しかし、新たに株式を上場させるためのハードルは非常に高くなっていますし、もし成功するとしても、会計士や弁護士などの専門家のサポートを受けるために多額の費用と2~3年の歳月がかかります。

しかし、株式を上場させなくても、自社のプロジェクトに賛同した人々に仮想通貨を発行することで、世界中からまとまった額の資金を調達できるようになりました。

新規上場による株式公開をIPO(Initial Public Offering)と呼ぶのにならって、新プロジェクトの立ち上げで独自の仮想通貨を公開することをICO(Initial Coin Offering)といいます。

そして、このときに発行される仮想通貨をICOトークンといいます。

ICOトークンの所有者へは、株主と違って、会社が利益を出しても配当を出す義務はありませんし、株主優待を提供する必要もありません。

プロジェクトが成功してICOトークンが人気になり、市場価格が高騰することが、先行投資をしてくれた人々へのリターンとなります。

世界中のICOトークンの約8割は、イーサリアムがベースになって作られています。

なぜなら、スマートコントラクトの中に、ETHの保有者が独自のトークンを簡単に発行できる権利が書き込まれているからです。

しかも、イーサリアムベースのICOトークンは「ERC20」など、世界共通の規格で発行されます。

投資家が複数のICOトークンを購入しても、イーサリアムベースのウォレット1個あればすべて保存でき、とても便利です。

本来であれば、新たな仮想通貨を一つ開発しようとすれば、ハイレベルの技術者を集めて、多額の予算をかけ、何年も費やさなければなりません。

そのような仮想通貨の発行権を一般開放し、ベンチャー企業や個人でもICOを行えるようにしたのも、イーサリアムの大きな功績の一つです。

次に著作権管理についてみてみましょう。

たとえば、本を出版すれば、出版社が本の価格や初版部数、印税(著作権使用料)を決めます。

本が売れて重版されれば、出版社はさらに追加の印税を支払わなければなりません。重版したことを、本の著者は、出版社から通知があって初めて知ります。

つまり、著者に知らせずに重版して、印税を支払わない場合があるかもしれず、そこは出版社を信頼するしかないのです。

しかし、こうした本や音楽、映像作品などの著作物について、どのように利益配分を行うのか、すべてスマートコントラクトに書き込んでおけば、印税は自動的に作家やアーティストに入ります。

つまり、出版社のような中間業者を通す必要がなくなり、取引の信頼性がさらに増すのです。

こうなると出版社を通さない方が透明性が高いようにも思えてきます。

次に、選挙についてもみてみましょう。

スマートコントラクトを使えば、選挙管理委員会という中間組織がなくても、オンラインで投票を集計することができます。

投票用紙で集計するときよりも、不正な意図が入り込む余地が排除できますし、集計にかかる時間は現在とは比較にならないぐらい短縮されます。

誰にも改竄されないので、公平で透明性の高い選挙が行われます。

さらにいうと、間接民主主義というものも不要になります。

歴史的には、まだ人口が少ない時代では、直接民主主義と言って、村の全員の多数決で政治が行われていましたが、人口が増えてくると、一人一人の意見を聞いて政策判断を行う直接民主主義には対応できないので、政治家を選挙で選び、自分の意思を政治家を媒介して国家意思に反映させる間接民主主義に移行してきました。

例えば、増税について反対か賛成かなどを、国会の中で国会議員の多数決で決めていますが、ブロックチェーンを使って、全有権者で一斉に投票してしまえばいいんです。

つまり、ブロックチェーンを使うので投票で不正ができないし、国会議員の各業界との癒着を排除した形で民意を国政に反映できることになります。

こうなると、極論ですが、国会議員は不要となりますし、そもそも政府自体いらなくなってしまうんです。

次に無人行政です。

役所では多くの書類を取り扱っています。

その書類をすべて電子化し、さらに内容のチェック、審査の手続き、これに基づく給付金や助成金などの支払いなど、一連の流れをスマートコントラクトで自動的に行えるようになれば、公務員の仕事も大幅に高速化・省力化されていくはずです。

納税も同じです。

例えば、企業間の資金の支払いも全て仮想通貨で行えば、資金の動きが改竄されない形で行われるので、脱税行為を防止できます。

しかも、その取引から自動で確定申告書類や財務諸表等が作られることにしてしまい、納税額の支払いまで全て自動化されます。

記録されたデータは改竄されないので、「この会社は脱税しているんじゃないか?」などの確認も不要ですから、もはや税務署も不要ということになります。

次にN F Tについてです。

NFTとは「ほかに替えが効かない、世界に唯一のものだとブロックチェーンが証明してくれるデジタルトークン」です。

非代替性トークン、ノン・ファンジブル・トークンの略です。

リアルな世界には、ただ一つしかないといえる物はたくさんありますが、データのコピーが自由なネットの世界では、世界にただ一つで、これが自分の物だと実証するのは難しいのです。

その問題を解決したのがNFTです。

芸術作品や骨董品の所有権、さらにはトレーディングカードやオンラインゲームのアイテムの所有権まで、オンライン上で特定し、保証できるようになりました。

ICOと同じように、NFTでも独自のトークンを簡単に発行できるイーサリアムのプラットフォームが、事実上の世界標準になりつつあります。

代替可能なICOトークンは「ERC20」などの規格が使われていますが、代替不可能なNFTトークンのためにも「ERC721」という独自規格が用意されています。

このような応用力の広さも、イーサリアムの強みです。

さらにスマートコントラクトで、NFTの取引をオンライン上で自由にできるようになっています。

このように、スマートコントラクトを用いることで、多くのことが自律化、合理化できるようになるということがわかるかと思います。

また、ブロックチェーンが、いかに破壊的なテクノロジーであるかということが、お分かりいただけたかと思います。

以上、いかがでしたでしょうか。

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